猫と生活するうえで、しつけはおろそかにできません。
私達人間と猫では進化してきた過程がまるで違います。食性、気質など全てが違う猫と同居するにあたって生活のルールは互いにとって大切です。
猫の寿命が10数年に伸びている現在、楽しいはずの毎日が苦痛になってしまうこともあります。
猫という生き物をよく理解した上で、互いのためにルールを作り、教えてあげましょう。
1. しつけの基本は環境づくり
電気コードをかじる、ゴミ箱をひっくり返す、植木鉢を倒す、等。予測される事件は限りありません。
その都度叱っていたのでは楽しいはずの猫との生活も魅力半減してしまいます。
その前に家の中を見回して、猫との生活環境を整えてあげましょう。
人間だけなの生活なら問題のないことも、猫との共同生活では飼い主の意識で事前に対応できることはたくさんあります。
猫を叱る前に、猫の気持ちや習性、行動範囲を理解して、「叱らずに済む環境づくり」から始めましょう。
猫は好奇心旺盛な動物です。気になるものがあったら、つい触りたくなります。更に、行動力もあり、空間の移動は立体的です。
猫が移動する時、通り道に邪魔なものがあったら、どかしてしまいます。
私達では考えもしない、棚の上は猫の通り道の定番です。
「棚の上に人形や壊れやすい置物などは置かない」
「テレビなど倒されたくない電化製品などには、転倒防止器具を取り付ける」
「コードにはケーブルカバーをつける」
などの工夫で、猫のイタズラを避けることができると同時に、猫を感電などの事故から未然に防ぐことにもなります。
「食べ物は出しっぱなしにしない」
「生ゴミやニオイの出るものはビニールや新聞紙に包むなどの工夫をしてニオイを防ぐ」
「ゴミ箱はフタ付きのものにする」
「植木鉢やストーブにはカバーやガードをつける」
「入ってほしくない場所のドアはすぐに閉める習慣をつける」
上記ような身の回りの生活を工夫することは他にもあると思いますが、猫の行動の先回りをしてトラブルを未然に回避し円満な信頼関係をつくりましょう。
2. 叱り方の基本は「その場ですぐに」
お家の猫ちゃんを叱る時の基本は「その場ですぐに」、現行犯逮捕です。時間が経ってからでは何のことだか本人はまったく理解できません。
叱る時は「イケナイ」「NO!」など、家族全員の共通禁止用語を端的な言葉で強く言います。
「~は~だからダメよ」など長い会話言葉では猫ちゃんに伝わらないばかりか、不快感だけが残ってしまい、飼い主様との信頼関係が崩れてしまいます。
また、家族全員でしつけの方針を統一してルール化しましょう。
「お父さんは叱るのに、お母さんは叱らない」「同じことをして、この前は叱られたのに、今日は何も言わない」など、対応に一貫性がみられないと猫ちゃんのルールとして定着しません。
3. 体罰は絶対にしない!
体を叩くなどの体罰は絶対にダメです。
叩いて叱ると、気の弱い猫ちゃんは強い恐怖を感じたり、臆病な性格になってしまいます。
気丈な性格の猫ちゃんは怒りの感情が生まれ、攻撃的な行動をとってしまいます。
叱られている、制止されているということが理解できるためには、頭を軽くタッチする程度のスキンシップの延長にとどめるべきです。
4. イタズラ防止は”災難の出現”で
お家の猫ちゃんがイタズラをしかけている姿を見かけた時、猫ちゃんに気付かれないように物を落として大きな音を出したり、缶を叩くなど、ビックリさせることで行動を制止させることが効果的です。
このような驚く状況が反復することで、「このイタズラをするといやなことが起こる」と学習します。あくまで飼い主様が悪者にならないことが重要です。
その様な事からすると、時々見かけるしつけ指南書などに書いてある、霧吹きや水鉄砲で猫ちゃんに水をかける、などの行動は飼い主様のイヤガラセが露骨に見られてしまい、信頼関係が崩れてしまいます。
ペットショップやホームセンターで市販されている「ペット用イタズラ防止スプレー」は苦味、辛味などの成分や猫ちゃんの苦手な匂いなどで作られています。
スプレーをソファやイタズラされたくないものに吹きかけておくと、イヤな匂いがしたり舐めると苦いことから猫ちゃんは自然と近づかなくなります。
猫ちゃんは柑橘類やココナッツ、シナモンなどの香りが苦手です。キッチンにあるような物を代用することも可能ですので工夫してみましょう。
ポイントは学習できるまで継続することです。飼い主様の行動に継続性がないと、好奇心旺盛な猫ちゃんは「今日のソファは苦いかな?嫌な匂いがしないかな?」と確認することを学習してしまい、お手上げになってしまいます。
しつけは猫ちゃんとの根比べゲームのようなものです。
楽しみながらやれるような気持ちで、飼い主様のメンタルトレーニングだと受け止めましょう。
5. 『ごほうび』は”褒め言葉”
叱ることばかりでなく、それ以上に褒めてあげることが大切です。
『ごほうび』は美味しいオヤツばかりではありません。猫ちゃんにとって褒め言葉は立派な『ごほうび』になります。
手櫛で猫ちゃんの首筋を撫ぜてあげながら、「イイコ」などの褒め言葉をハッキリと口に出して言ってください。猫ちゃんが飼い主様に可愛がられているという実感を感じさせてあげましょう。
「イイコ」などの言葉が“褒め言葉”として猫ちゃんの『ごほうび』になるまで使い込んでください。
飼い主様にとっても口癖になるくらい大盤振る舞いしましょう。猫ちゃんが『ごほうび』と感じ、ウットリするまですりこんでください。
6. 噛み癖の対応
野生の山猫から人間を一緒に生活するパートナーになってきた猫ですが、本来は狩猟動物です。獲物である動物を捕獲し、それを食糧として生きてきました。
相手を引っ掻いたり、噛みついたりするのはごく当たり前の行動です。しかし家庭でパートナーとして飼っている猫ちゃんであれば噛み癖は無くしたいものです。
人に噛みつくほどイライラしたり興奮したりする局面を考えてみましょう。
音やその場の空間によるストレス
猫ちゃんは大きな音や騒がしい空間を嫌います。大きな声で話しかけたり、そばで大きな音をたてるのはやめましょう。
室内では猫ちゃんが静かに落ち着ける場所を作ってあげましょう。
発情期
発情期になると猫ちゃんはソワソワしたり、縄張りを主張するため攻撃的になります。
繁殖をさせないのであれば、早めに不妊・去勢手術をして、ストレスをなくしてあげましょう。
触れられたくない
体を撫でることは大切なスキンシップですが、さわられることに慣れていない猫や、猫が触れられたくない時に無理に構っていると、怒って噛みつくことがあります。
尻尾を左右に素早く振ったり、耳をピクピクさせるのは、不快なサインのボディーランゲージです。そのような場面では撫でるのをやめましょう。
しかし、家庭で一緒に生活するパートナーとして暮らすのであれば、触れることを喜ぶ訓練をして慣らしてあげる必要もあります。
狩猟本能
元々野生から進化してきた猫は、動くものや獲物を捕らえようとする本能があります。この本能が満たされないとストレスが溜まります。
オモチャなどで遊んであげることによって狩猟本能を満足させてあげましょう。
この時、興奮しすぎてテンションが上がると、勢い余って飼い主に噛みつくことがあります。その時はすぐに遊ぶのをやめ、クールダウンしましょう。
子猫の時に可愛いからつい無意識的に甘噛みを許していたり、手の平をヒラヒラさせて追いかけっこをするなどオモチャ代わりにしていると、猫にとって「人間の手はオモチャ」だと認識して間違った学習をしてしまうことになります。
段々と成長して立派な体格になった時、今まで許してくれていたオモチャ(飼い主様の手)で遊ぶことが急に叱られるようになっても、猫ちゃんにはオモチャの認識を切り替えられません。
最初から手の平をオモチャ代わりにしないことを心掛けてください。